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M&A促進税制新設
M&A促進税制新設
1.はじめに
日本社会の少子高齢化は様々な分野に影響を及ぼしていますが、小規模事業者や中小企業の後継者不足による廃業回避も大きな課題となっています。そこで、行政も税制等で事業承継を支援していますが行政の力だけでは十分ではありません。民間のM&A仲介業者による事業承継が盛んになってきています。
2.親族外事業承継のリスク
現在では、親族内よりも親族外に事業承継するケースが多くなっていますが、それに伴うリスクも増大しています。一般的に、買い手にとってのリスクとは、売り手の負の財産が完全には把握できないところから生じるものです。
例えば、未払残業代、不動産に付いている法律上の制約、商標権や特許権に関連する訴訟、工場跡地の土壌汚染、取引先との間の潜在的な訴訟リスク等があります。一般的には、「簿外負債」とか「偶発債務」と言われるものですが、その内容は千差万別です。
3.令和3年度税制改正
このようなリスクに備える観点から、買い手としては、ある程度の内部留保を確保しておきたいものです。しかし、これを法人税等や消費税を払いながら、積立ていくのはかなりの時間を要します。
そこで、令和3年度税制改正では、「中小企業経営資源集約化税制」を創設することになりました。
これは、株式譲渡でM&Aを行う場合、株式の譲渡価額、つまり取得価額の70%相当額を上限として準備金を積み立てると、その積立金額を損金算入できるというものです。
4.具体的な制度内容
この税制を使えるのは、株式の取得価額が10億円以下の場合に限られますが、小規模事業の場合は、ほぼ10億円以内に収まると思われます。そして、据置期間が5年間あり、その後、原則として5年間にわたり、準備金を均等に取り崩して益金算入します。
つまり、M&Aがスムーズに進むように10年間の税制上の支援を行うものであり、一種の課税の繰り延べ制度です。
5.制度適用の要件
この制度を適用するには、中小企業等経営強化法のM&Aに関する経営力向上計画の認定を受けることが必要です。その上で計画に従って他の会社の株式を取得し、取得した日の属する事業年度終了日まで株式を保有し、準備金を積み立てる必要があります。
認定を受けた場合、所得拡大促進税制の上乗せ要件に必要な「経営力向上計画」が不要となります。
6.適用開始と終了
中小企業等経営強化法のM&Aに関する経営力向上計画の認定が受けられるのは、2021年通常国会に提出される改正中小企業等経営強化法の施行日から2024年3月末までです。約3年間が認定期間ですので、M&Aを検討している会社は、この期間を照準に当てて実行する価値があるのではないかと思います。