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産業競争力強化法等の改正案
1.はじめに
2月5日、「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」が閣議決定されました。現在開会中である第204回通常国会に提出される予定です。
法案の趣旨は、ポストコロナにおける成長の源泉となる①「グリーン社会」への転換、②「デジタル化」への対応、③「新たな日常」に向けた事業再構築、④中小企業の足腰強化等を促進するための措置を講じることとされています。
このなかで、④中小企業の足腰強化等を促進するための措置についてご紹介します。
2.中小企業経営資源集約化(M&A)税制
改正案によると、中小企業等経営強化法や経営承継円滑化法を改正し、経営資源の集約化(M&A)を通じた規模拡大等による生産性向上を進めるため、経営力向上計画の認定を受けた中小企業者がM&Aを実施した場合に中小企業経営資源集約化税制を活用できる仕組みを創設するとなっています。
経営力向上計画の任意的記載事項に譲り受けようとする企業の財務状況等に関するデューデリジェンスを追加し、同事項を記載した計画の認定を受けた中小企業者がM&Aを実施した場合に令和3年度税制改正法案に盛り込まれている①M&Aの効果を高める設備投資減税、②雇用確保を促す税制、③準備金の積立を活用できるようにします。
⓵設備投資減税は投資額の10%の税額控除又は全額即時償却を、⓶雇用確保を促す税制は、M&Aに伴って行われる労働移転等で給与等支給総額を前年比で1.5%以上引き上げた場合、給与等支給総額の増加額の15%の税額控除(2.5%以上引き上げた場合は25%の税額控除)を、③準備金の積立活用はM&A実施時に投資額の70%以下の金額の損金算入を認め、据置期間5年間の後、原則として5年間均等額を益金算入し課税を繰り延べることができるようにします。
中小企業等経営強化法のM&Aに関する経営力向上計画の認定が受けられるのは、今回の改正案の施行日から2024年3月末までです。
3.集約化手続の短縮(所在不明株の買取)
平成2年の商法改正前は株式会社の発起人は7名を必要としていたため、名義だけの株主が発生しやすく、現在に至るまで名義貸しの株主が存在していることが多々あります。
当初の発起人が経年によって所在が不明になることもあり、また相続が発生して株が分散して現時点の株主が誰なのか分からないという事態が生じやすくなります。これが、円滑な事業承継やM&Aを阻害する要因となっています。
会社法上、株式会社は株主に対して行う通知等が5年以上継続して到達せず、継続して5年間剰余金の配当を受領されない場合は当該株主の有する株式の買取等の手続が可能になっていますが、この「5年」という期間がネックになってます。
このため、経営承継円滑化法を改正し、株主の所在不明で事業承継(M&Aを含む)が困難となっている旨の認定を受けた中小企業者に対し、会社法の特例として所在不明株主からの株式買取等手続に必要な期間を1年に短縮することとします。