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電子帳簿等保存制度の利用拡大

2020年11月9日
電子帳簿等保存制度の利用拡大

1.はじめに

2020年10月1日に、改正電子帳簿保存法(電帳法)が施行されました。これによって、一定の要件を満たせば、紙の領収書や請求書を電磁的に保存することが可能となりました。これに商機を見出して、ラクスやマネーフォワード等がクラウドによる経費精算システムを提供しています。日経新聞によると、申込企業数がかなり伸びているようです。新型コロナウィルス感染症拡大によって非接触型のビジネスが拡大していますが、経費精算という業務が、働き方改革やリモートワークの推進と相まって電子化される流れになっています。

2.電子帳簿の利用度

それでは、現状の電子帳簿利用度はどのくらいでしょうか。電子帳簿による帳簿保存制度を利用している割合は、資本金1億円以上の大企業が72%と高くなっていますが、中小企業の場合は4.7%、個人事業者は1.1%と低位に止まっています。理由として考えられるのは、電子帳簿で保存するためには税務署長等の承認が必要であり、その承認の要件が厳しいことです。国税庁も平成27年度からほぼ毎年要件を緩和してきましたが、利用率が向上しているとは言えません。10月1日の改正施行も利用を促す施策の一環です。

3.10月1日の要件緩和

10月1日の改正による要件緩和は、「電子的に受領した請求書等をデータのまま保存する場合の要件に関するものです。従来は、「データの受領後遅滞なくタイムスタンプを付与、又は改ざん防止等のための事務処理規程を作成し運用」でしたが、10月1日以降は、「ユーザー(受領者)が自由にデータを改変できないシステム等を利用、発行者側でタイムスタンプを付与」でも可能となりました。これによって、クラウド経由でソフトを提供するサービサーの商機拡大となったわけです。

4.電子帳簿の利用は拡大するだろうか

しかし、経費精算が会社の経理すべてではないため、部分的な電磁的保存は可能であるとしても、電子帳簿保存法に対応した帳簿の保存になるわけではありません。まずは、利用している会計ソフトが電子帳簿保存法の要件に合致したものである必要があります。会計ソフトが日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)で認証されていなければなりません。以下が、認証されている会計ソフトですが、まだ少ないのが現状です。
参照URL https://www.jiima.or.jp/activity/certification/denshichoubo_soft/list/
さらに、税務署等の承認を得なければなりません。
専任の経理要員を置くほど余裕がない中小企業にとっては、なかなか手が届かないというのが実情ではないでしょうか。余程のメリットがない限り、電子帳簿保存に移行する会社が増えるとは思えません。

5.日本商工会議所の要望

帳簿の電子化は、事業者にとって経理事務の軽減が図れるとともに、行政にとっても徴税コストの低減に寄与するというメリットを認めて、日本商工会議所は、電子帳簿の普及を進めるために、次の点等を令和3年度税制改正において要望しています。

1)帳簿保存の承認申請を不要とする。少なくとも、期首3か月前という申請期限を期中申請も可能とする。
2)事務処理規程を不要とする等、関係書類の備付け要件を緩和する。
3)改ざん防止等一定の要件を満たした会計ソフトを導入した小規模事業者については、税理士の関与がなくとも事務処理規定等の備付、相互牽制、定期検査を不要とする。

6.今後の方向性

社会のICT化によって電子帳簿は普及する方向にシフトすると思いますが、今の段階では中小企業に対して強い導入誘因を与えているとは思えません。今後は、改ざん防止等一定の要件を満たした会計ソフトを導入して電子申告する会社に対して経済的なメリットが広く与えられることが必要であると考えます。
正規の簿記の原則に従って適時、適正に記帳し、訂正、加除の履歴が残る会計ソフトに基づいて作成された決算書と申告書が電子的に金融機関に提供される場合、さらに、税理士による監査が行われている場合、経済的なメリットが与えられることで、電子帳簿の普及は進むと考えます。

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